共働きと受験とADHD

共働きを続けたかった40代ママ。 娘は私立小学校に通うADHD小学生。 一生働き続けるつもりだったのに、小1の壁を越えられなかった。 娘の発達障害のサポートはどうしたらいいの? 私の再就職はどうなるの? さまざまに葛藤しつつ、納得できる人生を求めて試行錯誤しています。

合理的配慮の葛藤

私は発達障害の子を育てる保護者であると同時に、私立中学高校の教員(ここ3年は講師)です。

 

発達障害の子を育てる保護者の方からの、学校の合理的配慮に関する不満は本当によく耳にする。当事者として、合理的配慮を求めるのは当然の権利だし、配慮しないのはもはや法律(障害者差別解消法)違反ですよ。

 

でも、いろいろは合理的配慮の事例を見ていると、これを現場で担任としてやらなくちゃいけなくなったら、ちょっと無理というか、つぶれてしまうだろうな…、と教員として思わなくも無い。

 

たとえば、文科省の公式ページに出ている次の例。 

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文部科学省 - 8.合理的配慮の提供

(出典:【資料3-1-2】日本の特別支援教育の状況について (mext.go.jp)

 

これ、本当に理想的な配慮だし、本来全ての困っている児童生徒にこれくらい丁寧な配慮がなされるべきなんだけど、なんだけど、担任に対応が一任されたらしんどいだろうな…。

 

現場の教員としてすぐに思い浮かぶ困難さは次の二点。

「ズルい」「不平等」という声への対応。

そんなこという人いるのか…、と思われるでしょうが、実際、います。なぜなら、配慮される点が、それ以外の生徒の評価の対象となっているから。

よく、「合理的配慮はめがねをかけるのと同じ」と言われますが、やはり上記の配慮とめがねの使用とは異なると思います。「目をよく見えるようにすること」は教育の内容ではないし、評価にもつながらない。でも、「時間内にできる」「問題(漢字)を読める」ということは評価の対象になるので、そこが苦手でかつ配慮をうけられていない人は、不平等な扱いを受けたと感じてしまうのでしょう。進学がかかっていたりしたら、まぁ、当然ですよね。

加えて、合理的配慮に関する知識が不足している同僚教員から「甘やかし」とか「特別扱い」と指摘されて、後ろから石を投げられるような環境になることも、想像にかたくない。そうしたら、配慮を決めた担任は本当に辛い立場に追いやられてしまうよね…。

対応する時間の余裕

「ふりがなをつける」ってたいしたことないように思うだろうけど、全てのテストに間違いなくふりがなをつけるのは大変な作業です。音声で録音することも、大変に時間のかかること。(まして、授業のプリントにも、となったら、6時間分につけて、プリントアウトして…、となれば毎日1時間くらいその子の配慮のためだけに使うことになる。)

過労死ラインをおおきく超えて、土日も部活で働いているコップから水があふれるぎりぎり(もうあふれながらやってる)現場の担任一人にそれを通年でやれといわれたら、配慮を求める保護者を責めてしまう気持はわかるんだよね…。間違っているのは重々承知なんだけど、というか法律違反なんだけど。

 

文科省の事例にははっきりと「全教員でプロセスを検討」って書いてある。結局、ここが要点なんでしょうね。担任一人にまかせず、学校全体で対応できるか否か。でも、こんな理想的な学校はなかなかなくて、理解ある担任だったとしても、その理解を学校全体に求めるために戦って、というところから始めなくちゃいけない。

だから、保護者の立場から配慮をお願いするときには、担任に頼むのと同時に、担任が動きやすいように上の人にも頼む、ちゃんと診断に基づいた配慮なんだということを他の生徒や保護者に伝えるようにする、ということを心がけている。

それが正しいことかもわからぬまま…。

 

でもゆくゆくは、社会全体として(当事者や教育現場だけではなく)発達障害や合理的配慮への理解が進まないと、合理的配慮にまつわる困難は解消されていかないでしょう。

 

あと、予算つけろや。何のバックアップもないまま、現場の頑張りと工夫だけでやらせないで。人&お金、な。

 

2021年5月、障害者差別解消法の改正法が成立して、障害者への合理的配慮の提供を民間の事業者にも義務付けることとなりました。いま、合理的配慮って現場ではどの程度浸透しているんだろう…。保護者として教員として、ちゃんと知識を深めなくちゃいけないな、とこれを機会に思った。